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#002 「収納」は日常の美を殺す

「収納」という言葉が押入れやクローゼットのようなもののことを指すようになったのはいつからだろうか。中に入れてフタをする装置である。つまり、そこに入れられたものの存在を消してしまう場所である。「収納」になんでも入れて見えなくなっていると一見、部屋は「美しく」感じるが、それと同時に「収納されたもの」は「人目につくと困るもの」となる。つまり「美しくないもの」として認識されるのだ。

台所の流しの下の空間や吊り棚などの「収納」も、鍋やボウルを入れてフタをする。使い込んだ中華鍋の黒光りする鍋肌も泡だてできめ細かく磨きこまれたボウルの内面も「収納」されたとたんに見せてはいけないものとなる。

「収納」とは日々使う道具の美しさを否定する行為だといえる。

民芸運動が見出した「用の美」というのは「用いていることの美」であって、単に使いやすさの合理性を長き時間にわたって追求された造形の美しさをだけ指す言葉ではないはずだ。

だから日常的に使っている道具はなるべく「収納」しないで見える場所においておこう考えている。そのためには工夫がいるがそれはとても楽しいことだ。この大きなお盆は部屋のどこにどのように置けばいいのか、おひつはどこがいいのか。そういうことを考えだした途端、日常的な生活の場が美術館か博物館になったかのように思えてくる。

今日まずやってみたこと。台所の流しの下の空間についていたフタと吊り棚のフタを外した。中が丸見えだから、これからどんどん美しいものが美しく置かれていくはずだ。
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